音楽で食べていく ~(2)アーティストの基本「ライブ収入」~
アーティストの音楽活動といえば、まずは「ライブ」活動があげられます。
アーティストがライブを行うと、チケット代やグッズなどの売上がアーティストに入ります。
これが「ライブ収入」です。
知名度があり、固定のファンを抱えたアーティストともなれば、一回のライブツアーで何千万~何億もの売上を叩き出すことも珍しくはありません。
「ライブ」はアーティストにとっても非常に重要なイベントです。しかしライブの開催には費用が必要です。
例えばライブ会場を準備するためには、会場を借りるための「会場費」が必要ですし、事前リハーサルのための「スタジオ代」、ステージや機材を用意するための「機材セット費」、スタッフの「人件費」、ツアーライブの場合はさらに「移動費」や「宿泊費」、機材の「運搬費」などの費用が発生します。
そして当然、ライブの規模が大きくなればなるほど、開催に必要な費用もうなぎ登りに高くなっていくのです。
そのため演出やセットにこだわるアーティストは、チケットの売上だけでは開催費用を回収することができないこともあります。その場合は「開催費用の赤字分を、会場でのグッズやCDの売上でカバーする」という方法がとられることもあります。
「ライブ」は開催費用が大きい分、事前にしっかりとした計画が必要になります。しかし逆に言えば、綿密な計画に裏付けられた「ライブ」活動は、収益的にも音楽的にもアーティスト活動の大きな柱になるのです。
いくらインターネットが発達したといっても、ファンが生のアーティストと直接触れ合える機会というのは、まだまだ「ライブ」以外にありません。
CD不況の現代だからこそ、ライブ活動の重要性は日に日に高まりつつあります。
「新人アーティスト」の場合はどうでしょうか?
自分専用のライブステージを用意することができない新人アーティストの場合、ライブの開催には小規模のライブハウスと出演契約を結ぶのが一般的です。
ライブハウスと出演契約を結ぶと、ライブの開催に必要な会場準備は、全てライブハウス側が行ってくれます。アーティスト側で会場や周辺機材、スタッフを手配する必要はありません。
これなら開催費用がかからない分、安心してライブを行うことができそうですよね?
しかし実は、新人アーティストは、ライブで収益をあげることが難しいのが現実です。
新人アーティストが収益をあげられないのはなぜなのでしょうか?
その理由は、一般的なライブハウスの出演契約内容にあります。
普通のライブハウスは、出演アーティストに固定のギャランティー(出演料)を支払うことはありません。アーティストの出演報酬に関しては、事前にライブハウス側からアーティストに一定のチケットノルマが課せられ、ノルマを超えた売上の一部がアーティストの報酬になる、という形式が一般的になっています。
分かりやすいように具体例をあげてみましょう。
例えば新人アーティストのAさんが、ライブハウスと「チケットノルマ10枚、報酬は11枚目から50%」という出演契約を結んだ場合を考えてみます。チケット代は1枚3000円で固定です。
このケースの場合、Aさんがチケットを1枚3000円のチケットを10枚売っても、Aさんの手元には一円も入りません。
チケットを11枚売り上げた時点で初めて、『1500円』の報酬が発生することになります。
※ノルマは10枚なので、ノルマを超えた11枚目のチケット代の50%(3000円×0.5=1500円)という計算です。
新人アーティストの場合、3000円チケットを15枚(45000円分)も売り上げられれば大したものですが、それでも実際に手元に入る報酬は『7500円』です。5人編成のバンドであれば、一人『1500円』。これではとてもリスクや労力に見合った報酬とは言えませんね。
そんな中で、結果を残すアーティストは、ライブを重ねるたびに自分のお客さんを増やし、報酬へつなげていきます。
初めてのライブでは2、3人のお客さんの前で必死に演奏していたアーティストが、やがて10人、20人のお客さんを前に演奏できるようになり、最終的には100人、200人を熱狂させるアーティストに育っていく。ライブハウスの経営者たちは新人アーティストのそんな姿を何度も見ています。
もちろん合わせて、アーティスト自身に入る収入もどんどん上がっていきます。このあたりはチケット売上が、ダイレクトに収入になるライブハウスならではの醍醐味ですね。
つまりライブで安定した収益を確保するためには、パフォーマンスの質を高めると同時に、自身のブランド力や知名度を向上させ、「アーティスト単独で、お金を払うお客さんを呼べる」体制作りが必要になるわけです。