(画像:デビューシングル「ロマンスの途中/私が言う前に抱きしめなきゃね(MEMORIAL EDIT)/五月雨美女がさ乱れる(MEMORIAL EDIT)」。写真後列左が金澤朋子。)
ハロー!プロジェクトのアイドルグループ・Juice=Juiceで2代目リーダーを務めた金澤朋子さんが、5月いっぱいで芸能界から引退することを発表しました。Juice=Juice結成時からのメンバーで、グループのみならず“ハロプロの顔”的な存在の一人にまで成長していった彼女。グループ卒業後も、持病と闘いながらソロ活動の準備をしていましたが、新しい人生の目標が見えてきたこともあり、芸能界引退を決意したとのことです。そんな金澤さんの歩みと魅力を改めて振り返ります。
★ハロプロの“いちファン”からグループのリーダーにまで成長
アイドル活動を始める前からハロー!プロジェクト、とりわけ℃-ute のファンだったという金澤さん。2012年に行われた、Berryz工房&℃-uteの『超HAPPY SONG』のカラオケコンテスト『DAM★とも カラオケコンテスト』に参加します。優秀賞の「サイン入りポスター」目当てで応募したといいますが、それ以上の最優秀賞を受賞してしまうことに。結果特典としてハロプロのライブで中野サンプラザのステージで歌うことができました。
そこで歌ったことをきっかけに、歌手になる夢を抱き始め、同年レコード会社主催のオーディション『OCEAN MUSIC AWARD』に出場。ファイナリストになったことをきっかけにハロプロ研修生加入を勧められ、活動を開始します。
そして研修生に加入してわずか2ヶ月後の2013年2月、ハロプロ研修生新ユニットへの参加が決定。これが「Juice=Juice」となり、シングル『私が言う前に抱きしめなきゃね』をリリースします。当時のインタビューでは「自分が選ばれるなんてびっくりしました。でも活動歴が短いことを言い訳にせず、頑張っていきたいです」(2013年3月、web De-view)と意欲を語っています。その言葉通り、歌やダンスはほぼ未経験ながら、それほどのハンディ感はなく、デビュー当初からスキル面でも頭角を表していきます、
そして6月に行われたイベント内で、9月にメジャーデビューが決定したことが発表され、その場で金澤さんがサブリーダーに就任することが発表されました。
以降リーダーの宮崎由加さんとともにグループを引っ張っていきます。メジャーデビュー時には5人組だったJuice=Juice。年下組3人(高木紗友希さん、宮本佳林さん、植村あかりさん)が当時は無邪気かつ自由奔放なイメージで、リーダーの宮崎さんがほんわかとした雰囲気でグループをつつみこむように見守るタイプ。そんな中金澤さんはテキパキとした実務派サブリーダーのイメージでした。
その後グループとして、武道館公演実現を目標にした220公演のライブハウスツアー(2015年)、台湾・香港公演(2015年)、初の単独武道館公演(2016年)、 7カ国ワールドツアー(2017年)など次々と大きな夢を実現していきます。2016年にはドラマ『武道館』にグループ全員で出演。演技も経験しました。順調に活動を続ける中でしたが、2016年、金澤さんは子宮内膜症であることを公表。以後、体調を見ながらの活動となりました。
同じハロプログループでも、メンバーの卒業、新加入を繰り返して進化していくモーニング娘。やアンジュルム などに対して、Juice=Juiceの場合、メジャーデビュー時の5人固定で活動を続けていくのではと思われていましたが、2017年6月に新メンバー二人が加入。当時、メンバーそれぞれの個性が強く、とんがっていたイメージだったのが、新メンバーをみんなで可愛がって育てることにより、その関係性がマイルドになった印象がありました。
そして2019年には初代リーダー・宮崎由加さんの卒業後リーダーに就任。その年の年末には国立代々木競技場第一体育館でワンマンライブを開催しました。2020年以降は、歌とダンスのスキル面でグループを引っ張ってきた宮本さん、高木さんが、相次いで卒業、脱退し、初期メンバーが減っていく中で、リーダーとしてJuice=Juiceのイズムを下の世代に伝えていく役割を果たしていました。
2021年に入り、体調不良による休養もあり、10月グループからの卒業を発表。11月の横浜アリーナでの公演でグループから卒業しました。
★艶のある、しっかりしたボーカルに定評 高いコミュニケーション力でグループの渉外面を支える
そんな金澤さんの魅力は、まず歌では深みのある、しっかりとしたボーカル。その声はひときわ特徴的で、Juice=Juice結成直後、まだメンバーの歌声が識別しにくい時期でも金澤さんの声だけは一聴してわかるほどでした。そしてメジャー2ndシングル『イジワルしないで 抱きしめてよ』の中の一節“私はローズクォーツ”の歌割で、大人っぽい存在感を示し、その後も表現力豊かなボーカルは高い評価を得ました。
また、結成当初からしっかりした会話力も強みで、ライブでのMCや取材の場でも大事な要件やコメントを的確に伝えるのは金澤さんの役割でした。
メンバーの中で外交コミュニケーション力もひときわ高かった金澤さん。ハロプロ内外ともアイドルに友達が多く、ときには一緒に遊んだエピソードがSNSに掲載されることもありました。そのフレンドリーなキャラクターで、外部のスタッフとも率先してコミュニケーションをとっていき、SNSなどでの反応からも金澤さんが多くの関係者から愛されていたことが伝わってきました。筆者もグループ結成時から数えきれないほど取材させていただきましたが、歴代のハロプロメンバーの中でも特にフレンドリーで話しやすい存在でした。そんなふうにグループの渉外面を支えたのも彼女でした。
また金澤さんは5人兄妹という大家族の長女でとても家族思い。彼女がブログで綴る家族についての文章からは深い愛が伝わってきました。そして前述のように、デビュー前からハロプロの大ファンだった金澤さん。ファン目線も大切に、その発言やブログを通して、グループやハロプロの魅力を発信し続けました。デビュー当時から特に℃-ute、 中でも鈴木愛理さんのファンを公言。デビューのきっかけの一つとなった『DAM★とも カラオケコンテスト』では一般人として℃-ute のメンバーたちとステージで歌っていた彼女。グループ卒業後の今年3月には動画チャンネルで鈴木さんとともに℃-uteの人気曲『君は自転車 私は電車で帰宅 』を二人でカバーしました。これは『OCEAN MUSIC AWARD』オーディションの決勝で彼女が歌った思い出の曲。憧れであり続けた鈴木さんとの共演は、金澤さんにとっては夢のような時間となったのではないでしょうか。
★病気と向き合いつつも新たな目標に向けて再スタート
金澤さんは昨年11月にグループからの卒業後も、ソロでの再始動を目指して、準備を進めていました。ですが、今年5月17日、芸能界からの引退を発表しました。「病状に対する不安もある中で改めて自分の将来のことを考え、結果新しい人生の目標が見つかり、その目標に向かうために芸能活動を引退したい」という発表でした。
また金澤さん自身「グループを卒業した後はソロでの活動を考えながら過ごしてまいりましたが1人になることへの不安
将来に対する迷いや悩み
それらを感じながら、病気のこともある中で自分の未来を改めて考えて見つめ直し、このような結論に至りました」とコメントしています。
自身がハロプロファンだったということもあり、その目線も大事にグループを、ハロプロを、大きな愛をもって盛り上げてきた金澤さん。その愛は、ファンはもちろん、メンバー、スタッフ、関係者に強く伝わり、多くの人から愛されました。
その個性的な歌を聴ける機会がなくなるのは寂しい限り。だけどいつか”Juice=Juice○周年”“ハロプロ○周年“みたいなメモリアルなライブに特別ゲストとして登場してくれることに期待したいところです。
とにもかくにも、まずは健康第一に考え自身の生活を整えてもらいたいものです。彼女のコミュニケーション能力があれば、どんな環境で活動することになっても上手くやっていけることでしょう。彼女のこれからの人生に幸あらんことを祈ります。
文/田中裕幸