夏ドラマ「闇金ウシジマくん Season3」が放送中です。人気シリーズの最新作ですので、やはりファンの期待度も相当なもの。あの独特の雰囲気と展開はもちろん、主人公「丑嶋馨」をはじめとした、ヤミ金会社「カウカウファイナンス」のメンバーなど、一癖も二癖もあるような魅力的なキャラクターが織りなすストーリーは、一度見たら最後。あとはただ惹き込まれていくだけです。
ドラマ内では、ヤミ金会社ならではの取り立て風景や、借金に苦しむ債務者の姿などが、リアリティたっぷりに描かれていますが、これはあくまでドラマの中の話。はたして実際にはどうなのでしょうか?
そこで今回は、借金問題に関する相談内容や良く起こる問題・対策について、弁護士の先生に色々とお話を聞いてみました。今回“借金問題”について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の正木裕美先生です。
--記者
実際に借金問題で相談に来る方はどういった方が多いのでしょうか?
--正木先生
借り入れの目的や借入先等によって変わってはきますが、個人的な生活費や趣味、ギャンブル等のための借金ということだと、個人的には、30代~50代の男性、負債額100~300万円が多い印象でしょうか。
とはいえ、借金は、男女、老若男女問わず起こりうる問題で、決して遠い世界の問題ではありません。奨学金、住宅ローン、クレジットカード、携帯電話の割賦購入なども利用されている方は多いと思います。自分や家族、親族、友人など、近しい人にいつ起こってもおかしくない問題ととらえていただくのがよいかと思います。
--記者
暴力的な取り立てや、返済の為にお店を紹介するなど、ドラマの中では良く目にする光景ですが、実際には法律的に禁止されている行為などはありますでしょうか?
--正木先生
ドラマではよく見る光景かもしれませんし、一昔前はそのようなこともあったと聞きますが、現在は法律でとても厳しいルールが定められており、通常はそのようなことはありません。
貸金業規制法21条で、消費者金融などの貸金業者は、取立てにつき、人を威迫したり、私生活や業務の平穏を害する言動をしてはならないとされています。たとえば、正当な理由なく、午後9時~午前8時の間に債務者へ電話やFAX、訪問をすること、正当な理由なく勤務先へ連絡や訪問をすること、退去するよう言われたのに退去しない、借金の事実や私生活のことを第三者に漏らすこと、他の人からの借り入れ等による返済資金調達や家族などの第三者に借金の肩代わりを要求する、弁護士等からの受任通知が届いたにもかかわらず、債務者本人に返済を要求することなど禁止されています。違反すると、2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらを併科するとされており、ドラマのような暴力的な違法取立ては通常ありません。
ただ、貸金業法の登録を行い、法律に則って貸付を行う貸金業者を消費者金融とも言いますが、出資法の上限である年利20%を超える高金利で貸し付けをおこなったり、無登録業者などの違法業者を一般的にヤミ金と呼んでいます。ヤミ金からの借り入れは、貸付自体が無効なので一切返済する必要はないのですが、ヤミ金は、貸金業法違反の暴力的や執拗な取り立てをしてくる場合がありますので、絶対に借りない、また借り入れをしてしまったりトラブルになったときは、すぐに専門家にご相談ください。
--記者
やはりこれが一番聞きたい事かもしれません。実際に借金をして返済が苦しくなってしまった場合、なにか対策はありますでしょうか?また、借金をする際に気をつけるべきポイントなどがありましたら、併せて教えて下さい。
--正木先生
借金問題を見ていくと、そもそも計画性に乏しかったり、ライフスタイルや収支等を見直すことも必要ですが、返済が苦しくなってしまったときは、債務整理という方法があります。
債務整理には、3つの種類があります。
裁判所の手続きによらないのは、交渉で借金の減額や免除、金利カットやリスケなどを行う任意整理です。利息制限法に違反する高金利な貸付を受けていた場合には、借金が減額できたり、払いすぎた利息を返してもらう過払金の返還が生じることもあります。
裁判所の手続きでは、住宅等の財産を維持したい場合に、住宅ローン以外の借金を大幅に減額してもらい、原則3年間で返済をする民事再生や、高額な財産は失ってしまうものの、借金を払えない場合に法的に支払義務をなくしてもらう自己破産などがあります。
債務額、資産・収入、職業などのご事情によってベストな方法が変わってきますので、借金に困ったときは、弁護士に相談してみてくださいね。
借金をするときは、安全な業者か、金利が何%で返済に実際いくら払う必要があるのかをちゃんと確認しましょう。契約書以外にも細かい字で書かれた約款などもあり、ちゃんと確認していない方がほとんどですが、大切な内容が書かれていることがあります。わからないこと、納得できないことがあれば、借りてはいけません。
限度額と言われるとその金額まで借りても返せると思いがちですが、返済で生活が厳しくなったり、返済中に他にお金が必要になる、収入・資産状況が変わってしまうなど、当初の想定とは異なる事態が起きることもあります。我々弁護士も、生活の立て直しのために厳しいことを言うこともありますが、借入れを利用するときは、甘い考えを捨てて、計画的かつ必要最低限にしましょう。
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という事で、今回は“借金問題” について、弁護士の正木裕美先生に色々とお話を伺ってみました。ドラマの中のような世界は私たちの身近に確かに存在し、それを回避する為には、業者の選定、契約書・約款をきちんと確認する事、そして不明点が少しでもあったら絶対に借りない事。そんな徹底した意識が大切なようです。もちろん、借金をしないという事がもっとも重要なのは当然ですが、どうしても借りなくてはならない状況に追い込まれてしまった時には、とにかく必要以上に慎重になりましょう。あなたの大切な人生を破綻させないためにも。
・取材協力
正木裕美(まさきひろみ)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所