• 2016年12月03日

小さなクレームとあなどるなかれ!ご近所トラブルについて弁護士に聞いてみた!

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秋ドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」が放送中です。菅野美穂さん演じる主人公と、彼女を陥れる最凶の隣人役に松嶋菜々子さん。毎回ハラハラしながらご覧になっている方も多いのではないでしょうか?もちろん、ドラマの中でのハラハラ展開は、視聴者としてウエルカムなのですが、実際に自分の周りでこんな事が起こったら、たまったものではありません。

そこで今回は、ご近所トラブルに関する相談内容や、良く起こる問題について、弁護士の先生に色々とお話を聞いてみました。今回“ご近所トラブル”について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の篠田恵里香先生です。


--記者
ご近所トラブルで弁護士の先生に相談に来られる方というのは、どんな方が多いのでしょうか?また、良くある相談内容や、今までに先生が驚かれたような相談がありましたら教えて下さい。

--篠田先生
ご近所トラブルのご相談はやはり「主婦」が多いです。日中家にいることが多かったり、家事や子育て、買い物や散歩など、日常生活の大半でご近所と関わることが多いからでしょう。その意味では、ご高齢の方も比較的ご近所トラブルの相談が多いように感じます。逆に、30代~40代の働き盛りの男性からのご相談は少ないように思います。稀に、「奥さんが気が弱いので代わりに相談に来る」という意味では男性が相談するケースもあると思います。若い方の場合は、やはり、賃貸物件の隣人や、上の階・下の階とのトラブル。防音設備が十分でない賃貸物件の場合は、夜のテレビ音や扉を閉める音までも、トラブルのもとになるようです。

トラブルの典型例はやはり、「騒音」・「ペット」・「ごみの捨て方」・「水回り」等が多い気がします。ママ友同士のトラブルではやはり、「悪口」や「嫌がらせ」等が多くなっている気がします。

--記者
ご近所トラブルから裁判に発展するようなケースは稀なような気もしますが、大事(おおごと)になるとどのような結末が待っているのでしょうか?また、法的な罰則が課せられるようなケースもあるのでしょうか?

--篠田先生
ご近所トラブルが起きた場合は、「今後のおつきあいもあるので」ということで、通常は裁判までいかないことが多いです。請求額がさほど大きくないので裁判まではしないというケースも多いといえそうです。弁護士を立てて交渉するというケースさえさほど多くないと思われます。しかし、トラブルが相当悪質だったり大事になってくるとやはり、弁護士を立てたり、裁判での争いに発展することもありえます。例えば、以前有名だった騒音おばさんのケースは、民事で慰謝料請求の裁判となりましたし、刑事でも「傷害罪」として有罪判決を受けるに至りました。

また、「あの人は手癖が悪い」等と言いふらされたり、勤務先や自宅に悪質な手紙を送った等のママ友いじめの事例では、いじめた3人に対し各20万円、合計60万円の慰謝料を支払うよう命じる判決が下されています。やはり、「泣き寝入りはどうしても許せない」というほど悪質なケースは、裁判まで起こして白黒つけようということになります。

ご近所トラブルというと、比較的小さなトラブルのようなイメージがあるかもしれませんが、騒音で睡眠障害にしてしまえば過失致傷罪、誹謗中傷した場合には名誉棄損罪、隣家の壁に落書きをした等すれば器物損壊罪等、犯罪が成立する可能性もありえます。

--記者
ご近所さんにも色々な人がいるでしょうから、人によって様々なケースがあるとは思いますが、今までの相談内容などから、いわゆるご近所トラブルに巻き込まれない為に、私たちが気をつけるべきポイントなどがありましたら教えて下さい。

--篠田先生
ご近所トラブルに対する心構えとしては、「ちょっとの迷惑はお互い様」と考えることも重要です。多くの場合、迷惑をかけている方はさほど気づいていないものです。逆に言うと、自分も何かしら迷惑をかけているかもしれないわけです。もしかすると、迷惑をかけている相手方から逆襲されているという可能性だってあります。なので、まずは自分が何か迷惑をかけていないか振り返ることが大事です。

また、ご近所トラブルが泥沼化する原因は、やはり「普段のおつきあいが薄い」ことによります。感じよく挨拶をするだけでも全く印象は違いますし、「お隣さんに迷惑にならないように」という意識をお互いに持っていれば、ご近所トラブルにつながる要素も少なくなります。普段から良い関係を築いていれば、「気になったことを率直に申し入れる」ことで、早期解決が望めるという利点もあります。逆に、ご近所トラブルは「根に持ったままなかなか相手に言えない」となった場合に、相手に対する憎しみや恨みが異常なほど膨らんでいくものです。「不満をため込まない」のも大事な要素といえるでしょう。

--記者
意図せず、自分がご近所トラブルに巻き込まれてしまった際、どのような解決方法があるのでしょうか?今までのケースから、良くある解決方法や、逆にこんな方法で?と驚くような解決方法がありましたら教えて頂けますでしょうか?

--篠田先生
いきなり、「ちょっと迷惑なんですけれど!」と詰め寄れば「お互い様でしょ!」とか「あの人ちょっと変わってる」等と、逆に変な目で見られる可能性もあります。切り出すときは、「こちらもご迷惑等あれば遠慮なくおっしゃっていただきたいんですが」とあくまで低姿勢から。「実は~~で困っているんです。少し留意いただけると嬉しいです。」と抗議ではなくお願いベースで行きましょう。その場合、「夜眠れなくて。息子が受験前で。」等、具体的に困っていることを伝えるのも効果的です。意外に相手が気付いていないことも多いので、「あ!そうでしたか。気をつけます!」と円満に解決することも少なくありません。

相手によっては「手紙を差し入れる」「管理人等の第三者に間に入ってもらう」等の対応も効果的な場合がありますが、逆に「書面なんて大げさな」と逆切れされたり、間に入る人を間違えるとかえって炎上する可能性があります。相手との交渉方法を悩んだ場合は、是非弁護士に相談いただくことをお勧めします。ご近所トラブルは「大きくなりすぎないうちに消火」がとても大事ですね。

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というワケで、今回は“ご近所トラブル”について、弁護士の篠田恵里香先生に色々とお話を伺いました。ドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」の中でのトラブルは、タワーマンションの中での格差や主婦特有のトラブルと少し特殊ではありますが、私たちの実際の生活の中でもやはり、たくさんのご近所トラブルが起こっているようです。先生の言っていた、“ご近所トラブルは「大きくなりすぎないうちに消火」”を肝に銘じ、「ちょっとの迷惑はお互い様」の気持ちを忘れずに生活したいものですね。

・取材協力
篠田恵里香(しのだえりか)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所