俳優とは、一流であればあるほど、アスリートのようにストイックに自分の体と向き合います。
向き合う事で、どのように体を動かせば、どんな芝居ができるかを感じ取ります。
いざと言う時に緊張してしまい、身体が動かせないのでは、怪我をしてしまう可能性もあります。
素直な声を出すためにも、自分の体の動きの可能性を広げるためにも、大変重要な「ストレッチ」についてご紹介いたします。
なぜ、俳優にストレッチが必要か
先ほどお話しした中に出てきたキーワード「緊張」
これを解消する時にどんな言葉を使いますか?
正解は「ほぐす」です。
言葉通り、緊張してしまった顔の筋肉や、体の筋肉を解きほぐしてあげる事で、いつも以上の力を発揮できるようにしてあげるんです。
そんな時、必要になるのが「ストレッチ」
日ごろからトレーニングにストレッチをきちんと組み込んで、しなやかな身体を作っておかないと、俳優として自分の体をコントロール出来ません。
また、顔のストレッチを日々行う事で、俳優として重要となる滑舌や発声にも高い効果が得られます。
一流の俳優であればあるほど、ストレッチの重要性を理解し、トレーニングの前後に必ずストレッチを行います。
これは舞台などでも同様で、舞台袖で出番を待っている時に、緊張をほぐすためにストレッチをしたりするのは、当然のことなんです。
ストレッチをしっかりしておくことで、体の各パーツがしっかり動かせるようになり、舞台などでもケガをするリスクが格段に下がります。
ストレッチをする事がいかに重要で、俳優にとってなぜ必要なのか、お分かりいただけましたでしょうか?
いつも使っている自分の声で勝負するために「顔」のストレッチ
顔の中でも特に口の周りの筋肉は、常に柔らかくしておきましょう。
セリフを言うために口を動かす事は、俳優にとって当たり前のことなので必ず本番前にはストレッチを行っておきたいものです。
頬や口の周りの筋肉がほぐれていれば、正しい形に口を開いたり動かしたりできるので、無理をしないでいつもの自分の声を出す事ができます。
安定して、普段使っている声で勝負するためにも、口の周りの筋肉をストレッチで日々動かして鍛えておきましょう!
・両手を頬に添え、ぐるぐると動かす。
・指で両方の頬を、摘まんだり伸ばしたりする。
手を使っての顔のストレッチは、小顔効果やリフトアップの効果もあります。
・口を閉じたまま、口角を上げたり下げたりする。
・口を縦に大きく開閉したり、開けたままあごを左右に動かす。
・口を閉じたまま、頬を膨らませたり、へこませたりする。
・唇を尖らせて左右に動かす
口角を上げたり下げたりすることで、元々口角が下がっている人は継続すれば上がってくると言う結果が出ていますので、気になっている方はぜひやってみてください。
・目を力強くぎゅっと閉じて、勢いよくぱっと見開く。
・眼球を上下・左右に動かして、最後は上下左右を組み合わせてぐるっと回す。
・こめかみを指でくるくると回す
目が疲れた時に、無意識にやっていることはありませんか?
目のストレッチをしておくことで、俳優にとって大切な「目の演技」が出来るようになります。
テレビや映画などの場合、表情のアップを撮る時、数秒間~長い場合は数分間「まばたき」をしてはいけない場合があります。
こんな時も、普段から目のストレッチをして、目の筋肉を鍛えておけば難なくクリアできるようになります。
また、目の筋肉がストレッチで鍛えられていると、表情がいきいきとし、表情のバリエーションも増え、見ている人を楽しませる事も出来ます。
・口の中で舌を動かす
これは余裕があればぜひやってほしい顔のストレッチの1つです。
舌を使って頬を内側からほぐすストレッチです。ほうれい線が気になる方にもおすすめです!
これは頬の筋肉を鍛える、ストレッチするだけでなく、舌を動かす事で滑舌をよくすることができます。
顔は、動かしてあげる事がストレッチで、ストレッチをする事が筋トレのような物となります。
普段から気が付いたらほぐしてあげるようにしましょう。
思い描く演技をするための体を作るストレッチ
まず、俳優のトレーニングの基礎として、ストレッチが一番最初にやる事だと思っておいてください。
レッスンに通うようになれば、始まる前に自主的にストレッチぐらいは行っておきましょう。
自分一人で出来るのがストレッチや滑舌などの、良い所です。
家でも、朝起きた時や、お風呂に入っている時、お風呂から上がった時など、継続してストレッチをするようにしてください。
ストレッチの効果はすぐに表れる物もありますが、体を使う場合は継続がなによりの宝となります。
顔のストレッチなどは、一時的に固くなった筋肉などを解す役割もありますが、全てがそうではない事を理解しておきましょう。
身体のストレッチをする時に注意したいのは「無理をしない事」です。
伸ばしてみて、少し痛いな……と思う所でやめるようにしましょう。
それ以上に無理をすると体に負荷がかかり過ぎて、筋肉や靭帯などを損傷してしまう可能性があります。
それではせっかくのストレッチも意味がありません。
また、全く何も感じない場合もあまり意味がありません。
どこを伸ばしているのか、きちんと伸びているかを意識してやりましょう。
最後に重要なのが「呼吸」です。
基本は、「伸ばす時にゆっくりと息を吐き出す」ことです。
慣れていないとついつい伸ばす時に息を止めてしまいます。
伸ばしている時間を測るため声に出してカウントするのもありですね。
身体のストレッチは各パーツ、各筋肉や筋によって色々ありますが、今回は気負わずどこでも手軽にやれるストレッチに的を絞ってご紹介しましょう。
・首をゆっくりと回す
・両肩をぎゅっと上に持ち上げて、一気に落とす
・両肩を同じ方向に回す。左右交互に回す。
首と肩のストレッチは、顔のストレッチをした後に流れでやるといいかもしれませんね。
また、このストレッチは首や肩がこる方にもとてもおすすめします。
2つ目の「両肩をぎゅっと上に持ち上げて、一気に落とす」は、ぎゅっとあげている時に数秒キープして、降ろす時は一気に脱力となります。
肩を上げている間も、脱力した時も腕も手も力を入れず、重力に任せてぶらりとぶら下げておくことがポイントです。
肩や首のストレッチは、肩こりをほぐす時にやる動作がまさにそれです。
肩がこっていなくてもやっておけば、さらに肩こり解消にもつながります。
・両手の指を軽く絡ませて手首を回す
・そのまま、手のひらを押し出すように前に伸ばす。
・そのまま、今度は腕を上に上げて掌で天井を押し出すように伸ばす。
・そのまま、体は正面を向いたままで左右に腕を動かす。
セットでやってもいいですし、好きな順番で行っても構いません。
では、やってみよう!
では、ここからは10個の基本的なストレッチをご紹介しましょう。
伸ばしている時間の目安はだいたい6秒~10秒と考えてください。
1.三角座りをするように膝を立て、手は後ろにいて体を支えます。
立てた膝にくるぶしが当たるように、反対の足を乗せます。
お尻の筋肉が伸びていることを意識しましょう。
呼吸は常に一定で、伸びている時に息を吐くようにしましょう。
2.両手を床について、肩明日を曲げます。
曲げた足の方向に体全体をひねりましょう。
曲げた膝は90度になるように意識して、手の位置は方の真下に来るようにしてください。
脇腹の筋肉が伸びているのを意識しながら、息を吐き出します。
3.立ち上がって足を肩幅より大きめに開き、腰を落とし、膝に両手をついてください。
少しかがむような姿勢になりますが、背中が猫背のように丸く曲がらない様に意識しましょう。
片方の肩を体の前へ出すイメージで身体をひねります。視線もひねったのと同じ方向に。
下半身は常に同じ位置をキープ。
反対も行ったら、最後は両ひじを両ひざに乗せてキープ。
股関節と背中が伸びていることを感じてください。
4.床にあぐらをかくように座り、片方の足だけを伸ばします。
伸ばした足の方に手を伸ばし、両手の指を足の裏に添えましょう。
そのまま体を出来るだけ足に近づけるようにゆっくり倒します。
ももの裏を伸ばすストレッチです。
5.あぐらをかく様に床に座り、足の裏と裏を合わせます。
合わせたかかとを股関節に近づけるように引き寄せ、背筋を伸ばします。
視線はまっすぐ前にしておくことが重要です。
そのままゆっくりと上半身を前に倒しましょう。
背骨1つ1つが伸びていくイメージを頭の中に描きながら、ゆっくりと息を吐き出します。
6.体を真っ直ぐな状態で、仰向けに寝転がります。
腰が浮かない様に注意しながら、かかとをしっかり床につけ、つま先は天井を向く様にしましょう。
片側の足を胸まで引き付けます。
目安としては3秒息を吐きながらひきつけ、息を吐ききったら自然な呼吸に戻して7秒かけて元のまっすぐに伸ばした状態にしましょう。
7.立った状態で足を肩幅ぐらいに開き、片足を前に出しましょう。
出した方の足に体重を乗せ、両手は腰に、上半身がブレないように安定させましょう。
腰に当てている手を押し出すイメージで、腰を回します。
右足に体重を乗せている→右回り、反対なら左回りとなります。
腰と股関節を意識するようにしてください。
8.片足を後ろに伸ばしてひざを床に付き、もう片方の足は前に出して膝を立てます。
視線は真正面に固定して、両手を頭の上で軽く重ねましょう。
この時点で背中などが伸びているのを感じると思いますので、その部分を意識して下さい。
そのままの状態で身体を真横に傾けてキープ。息を吐ききったら元に戻しましょう。
反対も終わったら、今度は最初に傾けた方に、上半身ごとひねりましょう。
同じように、息を吐き出しながらゆっくりとひねり、吐ききればゆっくり戻しましょう。
9.床に真っ直ぐな状態で仰向けに寝転がります。
軽く足を開き、両手を真横に、一直線になるように広げてください。
片方の足をまっすぐ上に上げてキープ。息を吐きながら3秒であげましょう。
上げた足を腰をひねりながら反対方向に3秒で倒します。
倒した足先が出来るだけ体より遠くに伸ばしているイメージで7秒キープ。
10.床にうつぶせで寝転がり、片方の膝を体の側面にあわせて曲げ、膝がおへその横ぐらいの位置に来るようにしてください。
ゆっくりと肘を立て、上半身を起こしていきます。そこでキープ。
腰が浮いて床から離れてしまわない様に注意してください。お腹が伸びているのを感じられればOKです。
まとめ
ストレッチをすると言う事は、体をほぐすだけではなく、使える領域を増やす事にもつながります。
バランスを維持しながら伸ばすストレッチがいくつかあったと思いますが、これらは体幹を鍛える役割も果たしてくれます。一石二鳥どころか、三鳥も四鳥も良い事があるストレッチ。第一線で思うように自由自在に体を操れる俳優になるためにも、日々おこなってくださいね!